猫伝染性腹膜炎 (FIP)

猫さんの命を奪ったFIPと彼の最期について

辛いけれど、書いておかなくては、と思います。この病気について知らない人には知ってもらいたい。

写真を見ると本当に可愛くて、実物はもっともっと可愛かった、としみじみ思ってしまいます。シャーといったのは病院で注射打たれたときに先生に対して一度だけ。可愛くて優しくて、お膝ハンターも添い寝も朝早く起こされたこともごはん邪魔されたこともトイレ掃除も軟便騒ぎも全て幸せな思い出。

「まいにちのいぬのきもち、ねこのきもち」アプリに登録した猫さん情報、亡くなった日を登録できず「解除」しかないので、いまだに登録したまんまです。「解除」ってなんだよ。飼い主の気持ち考えてよ。7ヶ月と27日で亡くなった猫さん、そのアプリによると人間の年齢では9〜10歳とありました。小柄なままFIPを発症して成長が止まってしまったから、よけいに心に刺さる。2.98キロまでいった体重は、亡くなる数日前は2.4キロまで落ち、最後の日はもうすこし少なくなっていたんじゃないかと思います。

猫伝染性腹膜炎(FIP)と免疫力

うちの猫さんの場合、四国のブリーダーからやって来たのですが、1月初旬、生後約2ヶ月のワクチンを猫風邪ひいて食欲が落ちたから延期したという連絡がありました。その後約1週間後に打ったとの連絡。猫風邪といっても人間の風邪と違い、感染したらウィルスは体内にとどまり、免疫が落ちたときに繰り返し症状が出る、というのは予備知識でも承知はしていました。しかし、我が家にやってくる前日、今度はブリーダー宅で他の猫に寄生虫が出たとかで、予防的に薬を飲ませた、と聞かされました。後日調べると非常に厄介な寄生虫だったようですが、その薬もまた非常に強い薬らしく、一錠で効果があるとか。猫さんこのとき体重わずか680グラム足らずです。猫風邪、病院、ワクチン、寄生虫駆虫薬、空輸。我が家に到着してすぐに慣れてくれた人懐こい仔でしたが、ちいさい体にいろいろとストレスは重なっていただろうと思います。風邪の症状もひどくなってしまい、翌週の週末に即動物病院に連れて行きました。もともと免疫が弱い仔だったのかも知れないけれど、ストレスも免疫力に影響したんだろうな、と思います。ブリーダーからは、引き取り前から風邪をひいていたというと健康保証サービスが受けられないから注意するようにと言われました。今思うと弱い仔だってことが仲介にバレないようにするためかな、と。

ボンベイは日本ではあんまりメジャーではない純血種だから、ブリーダーでの繁殖で弱い個体が出るようになっていたのでは、とセカンドオピニオンをいただいた動物病院の院長先生に後日言われました。今思えばそうだったのかもしれません。3月の中旬の原因不明の軟便も、猫コロナウィルスの仕業だったのかもしれない、と思います。院長先生はもうおじいちゃん先生で、何十年も診てきた経験からも「FIPを発症した仔は、ブリーダーから、ペットショップから、という純血種の仔が多い」そうです。

セカンドオピニオン

かかりつけの動物病院の担当医は、FIPの疑いが濃厚、ドライタイプのぶどう膜炎や結膜炎の症状に加え、ウェットタイプの腹水も出てきたという段階で「とりあえずステロイド、風邪の症状は前の薬と一緒で」という感じで諦めモードでした。インターフェロンについては「私は使わない主義」と言い、この言葉にカチンときた妹が、別の病院を探してセカンドオピニオンをもらいにいこう、と提案してくれました。私は呆然としていたんで、その言葉はあまり覚えていなかったんですが。

セカンドオピニオンをもらって最後まで通った病院は土日も診療し日曜以外は7時半まであいているので、妹の車でなんとか平日も毎日通い、風邪の症状を抑える抗生剤や点滴をしてもらえました。実は2軒目の病院でもインターフェロンは勧められませんでした。院長先生いわく、インターフェロンは流行りのように使われることがこれまでもあったし、使う病院もあるけれど、自分の経験では効果は疑問だとのこと。それより、猫風邪の症状が重かったうちの猫さんには、とにかく自分で食べてくれるようにした方がよい、という説明でした。先生の勝手な「主義」ではなく、経験から得た説明だったので、私もお願いはしませんでした。「もしかして効いたかも」という思いもありますが、うちの子の食欲や毎日の潮の満ち引きのような発熱による体力消耗、頻繁な通院での注射に、さらに加えるのは抵抗がありました。

今回のことで、獣医さん選びは大切だな、と思いました。諦めずに、猫のQOLを考えてくれる先生を探すこと、です。1軒目の先生は、若くて親切な獣医さんだったけど説明が曖昧で、「主義」ですませてしまう。「対症療法しかできませんからね、とりあえず前に飲ませて効いた薬出しておきましょうか、ドライタイプで最後に神経症状が出てきちゃうとかわいそうなんですよね」なんて気の毒そうに言われてしまうと、私も精神的にかなり引きずられ、「ああもう本当にダメなんだ」と思ってしまいました。

「子猫だから助かる確率は非常に低い、でも今、猫ちゃんが自分でちゃんと食べられるようにしてあげよう」という2軒目の病院の先生の言葉には、勇気付けられました。とにかく、今の猫さんの状態をできるだけよくしてあげること。そのおかげでうちの猫さんは数週間でも長く生きられたし、ごはんも少しは食べられるようになったし、本棚にもタワーにも再び自分で登ることができました。普段全然鳴かない子が、ニャア〜〜とかなり気合い入れてのジャンプで、たまに失敗もしていたけど、成功したときは涙出るほど嬉しかった。

療養のために

FIPにかかった仔の飼い主は、藁にもすがります。私も例外ではありませんでした。

ペットキャビンさんの高滋養ミルク、キャットスパンなどの免疫に良い粉末ミルクはどれも溶けやすく、匂いも美味しそうで、途中まではよく飲んでくれました。残念ながら後半は、食欲がないときはミルクも飲んでくれなくなりましたけど。水は自力でちゃんと飲んでいました。

佐野薬局の漢方も試しました。しかし、正直なところFIPに漢方の効果は疑問です。特にウエットタイプを併発すると、病状の進行も早まるので、漢方のような長期間の摂取が必要なものは間に合いません。ちゅーるに混ぜてもハネミル混ぜても嫌がっていたのに、亡くなる1週間近く前まで飲ませてしまい、かわいそうなことをしました。

プロポリス、うちは「ミナスプロン」をあげていました。2本目買ったけど開封する前に亡くなってしまった。スポイトでちゅっとあげるから楽なぶん、最後の日曜日にもあげてしまった。そのあとにごはん食べてくれることが何度かあったから。ごめんね。これもFIPのスピードに勝てるかどうか、によると思いますが、2軒目の獣医さんにはプロポリスは確かに免疫に良いといわれました。うちはあげなかったけど、アガリクスも良いとか。どちらもとにかく質の良いものを、ということでした。

フードについては、ウェットもカリカリもとにかく色々あげました。うちの猫さんはチキン味が好きで、半ソフトタイプの「キャットボイス」のおやつとナチュラルバランスのカリカリは最後までちょっとずつ食べてくれました。以前も書いた銀のスプーンは、匂いがすぐにとんじゃうみたいで少しでも外に出しておくとダメだった。最後に食べたのは、7月2日日曜日、息の荒いなか、キャッツボイスのおやつ3粒くらいでした。

酸素室のレンタルと最後の日

ペット用の酸素室のレンタル、地域にもよると思いますが関東圏なら依頼すればすぐに設置に来てくれるようです。残念ながら、うちは間に合いませんでした。

うちの猫さんは、最後の土日には胸水が溜まり始めていたんだろうと思います。日曜日の夜からまた入院させたのは、翌日の月曜日も妹の都合で通院が難しかったのと、保育器なら酸素が供給できると言われたこと。はたと気づいて酸素室のレンタルを依頼したのは火曜日で、翌日水曜日の設置予定に。火曜日の夜に退院させるとき、院長先生に「体温が下がり始めたからあまりよくないよ、いつお迎えが来てもおかしくない。酸素が必要だよ」と言われ、でもその時はその夜に死んでしまうと思わなくて、台風の近づく大雨の中、妹が車で酸素スプレー探して買ってきてくれました。今思うと、退院を止めずに引き取らせてくれたのは、院長先生には死期が近づいていることがわかっていたからかもしれません。

猫さんは帰りの車の中ですでにキャリーの中でゴロン。帰宅後おむつをとってあげても、トイレにもいかずあっちでゴロン、こっちでゴロン。息も土日とは比べものにならないくらい荒くて、口呼吸が始まりました。酸素スプレーで吸わせてあげたけどあまり効き目はなく、結局退院から約2時間後。2、3回ニャア〜〜と鳴いて、おしっことうんちを漏らしてしまい、拭いてあげているうちにまた鳴きながら身体を伸ばし、抱いていた妹が「お姉ちゃん、息してないよ」と。思わず心臓マッサージしたら、2、3回短く鳴いて、息を吐いたあと、逝ってしまいました。

正直、2回の入院と静脈への点滴で、1回目のときはトイレ我慢していたために帰り道で漏らしちゃったり、胸水腹水が溜まったりと、猫さんのQOLを下げてしまったように思います。でも、入院させていなかったら、留守番中にひとりで死なせてしまっていたかもしれません。妹とふたりで看取ることができてよかったと思うようにしています。

猫は苦しいのをその場所のせいだと思って、身体が動かせるうちはあちこちに行く、というのをどこかで読みました。土日も、しばらくは膝の上にいても降りて足元に行って顎乗せたり、確かにちょっと落ち着かなかった。火曜日の最後の2時間は、ふらつきながらも部屋のあちこちに移動してしばらくの間うずくまり、ゴロンと横倒しに寝転がり、口呼吸。それでも、昔飼っていたフェレットが最後の日は半日痛みで苦しんで何度も叫んだのを考えたら、猫さんの苦しい時間は少なくて済んだと思います。

FIP発症と寛解の境目

今でもFIPの疑いを告げられた飼い主さんがSNSなどで増えています。きっと獣医さんの説明がわかりづらかったんでしょう、抗体価が高いだけで「FIPになった」「同居猫も確定した」という言葉も目にすると、違うよ、まだわからないよ、と思いますし、同じくらいの子猫でインターフェロンが効いて落ち着いてきたという例をみると「なんでうちの猫さんは」とつい思ってしまいます。

ただ、腹水の遺伝毛検査で確定したというのでもない限り、症状が落ち着いたという子猫さんはもしかしたらFIPとは別の何かだったのでは、と思います。獣医さんの経験した寛解例は成猫だったそうですし、とにかく自分からごはんを食べてくれることが大切、とのことでした。結局は免疫力、体力でどこまで勝負できるか、なのかな。うちの猫さんは発熱の繰り返しで相当に体力を消耗してしまっていました。食欲不振や発熱の症状が出た4月末から1ヶ月半経っていました。勝てませんでした。せめて5月頭の血液検査でFIPの疑いに気づいていれば。

猫伝染性腹膜炎の罹患率、発症率は猫全体の割合からすればそれほど高くないんでしょう。でも子猫のうちから飼う家庭が多いことを考えたら、それに初めての猫はやっぱり特徴がはっきりしている純血種の子をブリーダーからという人も多いことを考えたら、猫に関する番組や雑誌、ムックでこの病気をもっと紹介してほしいと思います。「ねこのきもち」ですら、病気特集の症状のほとんどにFIPの恐れがあるというのに全く名前を出さなかったりする。猫ブームだからこそ、研究がまだ進んでいない「不治の病」があることを知らしめてほしい。知っていれば早く病院で診てもらって、助かる子だって少しは増えるかもしれないんですから。

ペット保険

うちはペッツベストに加入していました。選んだ理由は、将来的な保険料の値上がりが低いことと、腎臓病のような長期にわたる治療に対応してくれるということ。ただ、ここは欄外に猫伝染性腹膜炎の治療費については2万円を上限とする、という条件がついています。また、書類到着から支払いまで数週間、とありますが、猫風邪の治療について獣医のサイン入り診断書で申請しても、結局カルテのコピーよこせ、といってきたし、いまだに支払いがどうなるのか連絡がありません。窓口対応の保険は総じて値上がり度が高いのが難だけど、動物病院がかわりに申請してくれるのは精神的にも楽かも。もっと条件のよいペット保険が出るといいんですけどね。

猫さんにとってベストなこと

インターフェロンを使ったり使わなかったり、強制給餌するかしないか、入院させるかさせないかなど、何がベストかはわかりません。特に、いつ終わるともわからない戦いだけど殆ど勝ち目がない、というFIPとの戦いでは。ただ、飼い主さんがどんな対応をしようと、その時ベストだと思ってしたことなら猫さんも理解してくれるのでは、と思います。猫に限らず、だと思うんですが、動物たちは死ぬ直前まで、動けるときは自分で動いてトイレも行くし食べたければ食べるし行きたいところに行く。甘える。

私が一番恐れていたのはドライタイプのFIPの脳神経症状で、麻痺や痙攣が出てしまい猫さんが思うように動けずにゆっくり弱っていく、そんな姿を長々と見させられることでした。見る私も辛いだろうけど猫さんはもっと辛い、人間と違って、自分のしたいことができなくなる理由が理解できないのだから。胸水が溜まるスピードがそんなに早いと思っていなかったので、実は、猫さんが死ぬ前日、妹とLINEで安楽死について相談しました。ふたりともスマホの前で号泣しながら、院長先生に明日相談しよう、と。退院させるときに院長先生に安楽死について聞いてみたら、昔ならそうしたかもしれないけれど、今は薬や設備がよくなってきたから(あなたの子の場合)しませんよ、と言われました。先にも書いたように、先生には安楽死させなくても死期が近いとわかっていたからかも知れません。ただ、安楽死させることを考え始めたら、火曜日の昼間は仕事中に「死なせる日を自分で決めてカウントダウンすること」を疑似体験して、胃の腑がえぐられるような辛さを味わったので、他の飼い主さんには、猫さんにとって本当に辛い症状が続くのでもない限りは勧められません。

猫を飼うしあわせ

ペットロスって、1ヶ月以上いくつかの症状が続くなら、と書かれていたけど、毎日のように泣いてしまう今のこの状態、正直ほんとうに辛いです。タワーやソファ、本棚、ふと目を向けるとそこにいた猫さんの姿を思い出します。その一方で、猫さんとの暮らしの楽しさ、幸せを思うと、つい「次にもしも猫をお迎えするとしたら」なんてことを考えてしまい、まだ四十九日も過ぎていないのに、とループのように落ち込んでしまいます。

初めての猫さんとの半年足らずの密度の濃い暮らし、最後の1ヶ月半は本当に辛かった。でも、「また猫と暮らしたい」と思わせてくれるほどのしあわせを、彼からもらいました。ごめんねばっかり言っているけど、ありがとうという気持ちも強いです。虹の橋が本当にあるなら、また逢いたい。そのまえに、生まれ変わってきてくれないかな。

広告