カッコーの歌 Cuckoo Song

by フランシス・ハーディング

カッコーの歌

「嘘の木」の前に書かれたファンタジー色の強い作品。ヤング・アダルト向けかファンタジー好きが対象だから、と読まないと損してしまう重厚さを感じる。

「嘘の木」でも主人公の思いや周りをとりまく厳しい現実が子供向けというには重いものだったけど、こちらも意外な主人公かも。彼女の「私はいったい誰」という疑問に、読む方も一緒に頭を悩ませる。

主人公のトリスは11歳、妹のペンは9歳で、11歳や9歳ってこんなにおとなびているのかな、とか、それなりに財力のある家のお嬢さんであるペンがフラフラと街を出歩いているのはおかしくないのかな、とも思うけど。ただ、彼女たちの姉妹仲の描写は、きょうだい、特に姉妹には「あるある」と思うんじゃなかろうか。笑 今でこそ私も妹とは仲良くやってるけど、こどものときは性格も違うしひどかったなぁ。私の方が結構年上なので、叱られることも多かったけど頭の回転とずる賢さでは年齢の分、上だった。笑

読んでいると映像が浮かんでくるのは「嘘の木」以上。これ、IMDbにページがあって、TVシリーズ化の企画があるみたい。絶対観たい。

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嘘の木 The Lie Tree

by フランシス・ハーディング

Frances Hardinge

嘘の木 / フランシス・ハーディング著

日経の書評で「カッコーの歌」に興味を持ち、先に翻訳が出ていたこちらも知りました。あらすじくらいはいいけども、読むならネダばれなしのほうがオススメ。

牧師であり著名な博物学者でもあった父が発見した化石に捏造の疑いがかけられ、母、弟とともにヴェイン島のやってきた14歳の少女フェイス。島に来て早々に父が謎の死を遂げ、自殺を疑われ検視審問にかけられることに。父を慕うフェイスは、父が何者かに殺されたのではと思い、自らの知恵と父の残した「嘘の木」で犯人を探そうとする。

女性は持参金を持って立派な家に嫁ぐことが幸せであり、知性では男性に劣ると思われていた時代に知性を武器にするフェイス。一応、児童文学やヤングアダルトのカテゴリに属するようだけど、子供が読んでわくわくするような冒険譚とは程遠くて、世間の不条理、不公平、人間の昏い部分が描きこまれています。

神とは信仰とは、という問いや、信仰という意味を持つフェイスの名前と「嘘の木」との対比も意図的なんだろうな、とあとから気づく。ミス・ハンターとミセス・ヴェレの関係も、この時代には抑圧されたであろう存在であることをほんの数行で表していて、うまいなぁ、と思いました。さすがに14歳のフェイスには見抜けなかったみたいだけど。

「カッコーの歌」はこの小説よりも前に書かれたものだそう。たぶん、他の著作も随時翻訳が出るんだろうけど、早く読みたいと思ってしまう。ヤングアダルト向けなら、頑張れば原著でも読めるかも。

何があってもおかしくない

by エリザベス・ストラウト

何があってもおかしくない / エリザベス・ストラウト著

「私の名前はルーシー・バートン」の姉妹編、というより、こちらを書きたくて「ルーシー・バートン」を書いたのかな、と思うような短編集。短編それぞれが、今は故郷を離れ有名な作家になったルーシー・バートンをめぐり少しずつ繋がっている人々を描いている。中には背中がぞわっとするような人物も含まれていて、小さな町だからこその怖さを感じる。

エリザベス・ストラウトの作品は、何かすごく大きな事件が起きるわけではないけれど、完全な悪人も完全な善人もいない、そんな人々の日々の暮らしを覗くような感じ。私の好みも変わったのか、ミステリよりもこういう小説がいいな、と思うようになってきた。人間の心の中を覗く怖さ、という点では、ミステリでもルース・レンデルは今でも私のベスト作家のひとりだけど。エリザベス・ストラウトも、新作が出たらこれからもずっと買う。

パールとスターシャ

by アフィニティ・コナー

アウシュヴィッツの「死の天使」メンゲレのもとに送られた双子、パールとスターシャの物語。本屋でアンソニー・ドーアの賛辞に気づいて衝動買いした本だけど、彼の著書にも通じる美しさと丁寧な積み重ねを感じる物語だった。

フィクションだけど、メンゲレ以外にも、実際のアウシュヴィッツの生存者をモデルにした人物が出てくる。パールとスターシャにも、実在の双子のエピソードが少し盛り込まれている。とりあえず、この本は、こういう著者に会えた記念としてもずっと手元に置いておく。

次に読むのは、「ヨーゼフ・メンゲレの逃亡」。

影の子

デイヴィッド・ヤング

原題はStasi Child、シュダージのこども。1970年代、女性刑事がシュタージと異例の合同捜査を行い、惨殺された少女の身元と犯人を捜す、というあらすじ。東ベルリンが舞台とあって、その昔ベルリンの壁の上を歩いたことのある私としては見逃せず読んでみた。フィクションだけれど、実際にあったことをヒントに描かれていることもあるそうで、まぁシュタージの支配する世の中の辛さ、気味悪さはよく再現されていると思う。だからあんまり読後感はよくない。なにせ東ドイツはこの物語のあとまだ10年以上も壁を守ったわけだから。

残念ながら、主人公の女性刑事にあんまり感情移入できなかった。シリーズ化されて、すでにあと2冊出ているようなんだけど、翻訳が出ても買わないかなぁ。

ヌヌ 完璧なベビーシッター

気になる本。というのも、日経の書評の冒頭にルース・レンデル「ロウフィールド館の惨劇」からの引用があったから。

ユーニス・パーチマンがカヴァデイル一家を殺したのは、読み書きができなかったためである

レイラ・スリマニのこの本も、こんな一文から始まるとある。

赤ん坊は死んだ。ほんの数秒で事足りた。

ゴンクール賞を獲得したというこの本、レンデルに比されるなら読んでみたい。

…で、読んでみました。(2018年6月17日追記)


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